別荘内の希少なアヤメ(高鷲町)


「珍しいアヤメを見に来ませんか」
関根さんに誘われ、高鷲の別荘地「サンシャインロイヤルガーデン」(以下ロイヤルガーデン)に伺った。

珍しいアヤメとは、「ナスヒオウギアヤメ」。天皇家の那須御用邸から株分けして管理しているとのこと。昭和天皇が研究され、種が出来ないし新種なのではないか、と現在確認が行われているそうだ。国の絶滅危惧種にも指定されている。

「全国で3カ所株分けしましたが、ここ以外は皆枯れてしまいました」




関根潤一さんは日本のログビルダー創世記のメンバーのひとり。ロイヤルガーデン内にも関根さんの作品が多く並ぶ。普段見る郡上とは全く違う光景だ。関根さん自身も敷地内に家を建てて移り住んだ。

ナスヒオウギアヤメが咲くところは、小さな棚田のような湿原園がつくられ、周りはミズナラなどの広葉樹、そしてアカマツの林が広がる。

「アカマツは戦後植えられたもの。松枯れも心配されるので、これからもともとこの辺にあった在来種の森にして、里山の風景を復活させたいんです」

美しく見える松林は、かつては炭焼きなどが行われていた広葉樹の森だったのだろうか。標高が高く雪が多いここ鮎立(きったて)の、昔からある森を見たくなった。



山水を引き込んだ湿原園


アカマツの園内


ワラビは10月まで楽しめる


この日関根さんは、長野県の出版社「まちなみカントリープレス」の取材を受けていた。地方発信にしてハイクオリティな「kura」が有名だが、昨年から岐阜県の魅力を伝える「hitomi」を発行している。写真が美しい冊子で、この日もカメラマンが時間をかけて建物を撮影していた。


Sさん宅。手前はビリヤード台があるプレールーム


取材先である名古屋市のSさんの別荘は関根さん「お任せ」でつくられた。
Sさんは本当は高山市に別荘を構える予定だったが、たまたま立ち寄ったここで関根さんと出会い意気投合。
遊び心たっぷりの建物は平成22年「ログハウス建築コンテスト」(日本ログハウス協会)で審査員特別賞を受賞した。




撮影はとても丁寧に行われた

Sさんは月2回程度別荘を訪れる。冬は雪が深くなり足が遠のくが、行く際は事前に連絡をすると、管理する関根さん達が到着に合わせて除雪をし、床暖房のスイッチを入れておいてくれるそうだ。

別荘を購入し、郡上が気に入って住民票を移す人も多いという。しかし別荘地は企業が管理する私有地。普通は市が除雪をしてくれるが、ここは管理者が行う。市の広報もここには届かない。



サンシャインロイヤルガーデンの西尾社長は憂いている。

「別荘に住む多くの人が、郡上を大好きで「終の住処」にしたいと思っている。しかし行政サービスから切り離された暮らしは不安です。自治体が別荘を支援している長野などは永住することができる」

「また市の下水道が配備されていないので、浄化槽をいれる必要がある。比較的新しく造成した私たちは合併浄化槽を入れていますが、私有地内の規制は無く、他の別荘地では家庭用雑排水がそのまま流されているところもあります。

高鷲は分水嶺もあり、水を生み出すところ。ここを汚してはいけない、と思います。

一般市民には合併浄化槽の購入補助がありますが、別荘所有者にはありません。
せめて住民票を移した移住者には市民と同じサービスが受けられれば、浄化槽の整備が進むと思うのですが・・・」


後日、移住を促進する郡上市交流・移住推進協議会のメンバーに意見を伺った。

「別荘地は個人が経営するいわば“レジャー施設”ともみられる。施設の管理は管理者に責任があるのは仕方が無い。現在除雪は市の財政を逼迫しており、別荘地へ拡大するとすれば費用負担をどうするか、という問題がでてくる。

ただし、高鷲には1000棟を越える別荘が既に建ち、郡上市内でも大きなコミュニティーとしてみることが出来る。コミュニティーとしてみた場合、自治が必要だ。「別荘」という新しい集落の自治会をどうするか、遅かれ早かれ今後考えていく必要があるだろう」

煩わしい都会の喧噪や人間関係を離れて、悠々自適に過ごせる田舎暮らしに憧れる移住希望者は多い。しかしこれまでの「田舎」はイメージと違い、日々忙しく、人づきあいが頻繁であることに気づく。
別荘では憧れの「田舎暮らし」をスタートできるが、その中から別荘内、そして周りの地域の人と交流をしたい、とう希望も増えているという。
別荘管理者は地域出身の方も多く、地域の祭りに誘ったり、地域の達人に技を習う企画などを始めるところも出てきた。

多くの人が見て美しいと思う別荘地の町並みとそれを包む里山の木々。
戦後、湿地を開拓して村を築いてきた高鷲で人がつくりたかったもの、残したいものの狭間に、これからのムラを形づくるためのヒントがあるのかもしれない。


美しい町並み


ゲストハウス。こちらもログで建てられている。


落ち着きのあるゲストルームの居間



関根さんがてがけた先述のSさん宅。2階のベランダにはグネグネと曲がった柵が存在をアピールする。表面の凹凸は床柱などでは見かけるが、こんな使い方をした家は見たことが無い。
インパクトはあるが、木の生命力を感じ、何故か心地よい。

「遊んでいい、というのでわざわざ曲がった木を探してきました。自分は大工でないので、「これをやっちゃいけない」という考えがあまり無いんです」
と笑う関根さん。


関根さんはご両親を東京から呼び、高鷲に共に住む。ここは関根家の「終の住処」になるのだろう。ご両親は敷地内に花を植え、草をひく。ロイヤルガーデンの貴重な戦力、とのこと。

「大変だけど、まぁ身体が動かせるので健康にはいいかな」
とお母さんが笑う。

関根さん達は、新しく郡上に来る人々とともに、これからもここの里山の林の成長を見守っていかれるのだろう。

アヤメが満開になるその頃、また伺いたいと思った。

※関根さんを取材した「hitomi」は6月25日発行とのことです。書店および岐阜県内のコンビニエンス・ストアでも入手できます。

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