魂の所在~今あること。そして未来へ

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映画『FOUJITA』 その評価
私は大の小栗監督のファンであるため、冷静な映画批評は書けないと、前もって断ったうえでの話だが、

映画『FOUJITA』 は素晴らしい出来である。

この映画を見た多くの人は、よく解らない。抽象的すぎる。フジタの人となりが表現されていない。

ごもっともな感想である。

それらの意見はそれぞれの主体である人の映画の見方なので否定はできない。

だが、その人に対し「もう一度見るとこの映画の素晴らしさが見えてくる」とだけ伝えたい。

小栗映画を見ている(といってもそんなにたくさん作品があるわけではない)私としては、この監督が、単純に日本人にも忘れられているような画家の生涯を描いてその復権を試みるというような作品を作るわけはないと知っているからである。

しかし、映画を見る側は、藤田嗣治という、フランスで高く評価され、愛されたという日本人画家の生涯を知りたいと思うから、どうしてもその人生の顛末に引きずられてしまい、挙句の果てには、本人の想いは、本人にしかわからないというように突き放してしまう描き方に消化不良を起こしてしまうのだろう。

小栗監督の映画は
①静止画のような画像としての画面であり、
②その画面の中にあらわれる、人やモノの演劇的構成であり、
③そして、時間を越えた伝承やファンタジー
で構成されている。

絵画のような風景や描写を画面に表し、現実の時間を映画の時間に変えてしまう手法。
説明的な会話をほとんどそぎ落とし、画面に表す演劇的構成の補完的要素として言葉を使う手法。
そして、現実世界から(この世ではない)深層世界に見るものを引きずり込むための説話が利用される手法である。

初めて小栗映画を見る人は、この手法の斬新さに戸惑い、抽象性にいらだつのだろうが、映画を見たことさえ忘れた頃、映画のイメージのシーンが突然とよみがえるような経験をする。小栗映画はそんな装置なのだ。

もっと不真面目に小栗映画の三要素を語れば、
①にモノノケ
②に能的要素
③に岸部一徳

これは少し茶化し過ぎだが、彼の映画には無くてはならない要素である。

ある意味では、小栗監督の作品は何を見ても同じである。
映画そのもののテーマも同じであるといっても過言ではない。

そこに、彼の映画作品の普遍性があるのだといえるだろう。

この映画を何映画と問えば、それは明らかに戦争映画だと思う。正確には戦争の時代の映画ということだ。

フジタの半生の中にあらわれる、第一次大戦後のフランスから第二次大戦に向かう日本の状況を、フジタという人間を通して観客は追体験する。

それは、単に戦争の悲劇や悲惨さを"見る"ということではなく、人々がその時どう思いどう生きていたかを表現しているのだと思う。

主人公フジタを含む、全ての登場人物は言わば時代を映す素材の一部ようなもので、呟きのように発せられる言葉によってそれが人であることを認識させている。

主演のオダギリジョーにしても、中谷美紀にしても、他の俳優にしても、その俳優の持つ演技とか個性などというものを極力表面化させないよう心掛けられている。

映画の中で召集令状を受けた先生役の加瀬亮が話す民話の一人語りや、フジタが疎開先の山の中で出会う老婆との対話などが、逆説的に物語のリアリティーを深めている。


この映画の公開の前日に、パリのテロが起こった。
そのことを受けて、「パリで、とても不幸なことが起きました。この映画のキャッチコピーは『パリが愛した日本人、あなたはフジタを知っていますか?』となっています。 1920年代と40年代の日本とパリを、フジタを通して描いた作品です。20年代から数えますと、ほぼ100年近く時代がたっていますけれど、欧州はどう いう社会なのか、あるいはアジアは欧州と違ってどうなのか…この封切りの初日に、パリのテロを受けて、あらためて私は考えました。もしかしたら、この 『FOUJITA-フジタ-』で描いている世界も、14年から振り返って遠い昔のことではないんだと。今に結び付く問題が、この映画の中にもあるんだろう な、ということをあらためて今朝、しみじみと考えました」と語っている。

小栗監督にとって映画とは、世界の今、日本の今をあぶりだすための舞台装置なのだと思う。







タグ: 小栗康平 FOUJITA